時にそれ程遠くない未来ー・・・

人類は、まだ自らの進化に戦いを必要としていた。

そして、新たなる悲劇が生まれる・・・
ーAM2:00ー
地球連合C型戦艦「ヘルファイア」ブリッジ

「なに・・・・何処にも・・・それらしき機影は確認出来ないだと?!」

どうやら、ブリッジで怒鳴っているのは、「ヘルファイア」艦長、新田のようだ。

「はっ、ライアス、CAM-ガジェットからも同一の報告内容です!」オペレーターが叫ぶ。

「何故奴らの、この3ヶ月の捜索期間、どうして、粒子反応やガンダニウムの装甲すら見つからなかった、のだっ!」
ツバを飛ばしながら、途切れ途切れに新田が叫び、、艦長席の隣に在る机を叩いた。

「それがどうだ!?連中は易々とーー地球圏へ降下してきた・・・連合の衛星にも引っかからずに!」
そして又机を叩く。

「艦長・・・」

ブリッジの中に居る軍人が、うろたえたように彼を見た。

(そうだ・・・一番動揺しているのは俺より、こいつ等の方だ・・・こんな時に、俺が動揺してどうする!)

「・・・総員、第一戦闘配備!ラッカ、索敵は!」
ラッカと呼ばれた、先ほどの男オペレーターが素早くキーに手を伸ばす。
「本艦周辺に敵影はありません!しかし、ミノフスキー粒子の影響で200km以上は探知不可です!」

「なら大丈夫だ・・・ブリッジ遮蔽!各部ブースターパネル、異常無いな!!ミノフスキー・ドライブ・ユニットも・・確認しろ!」

「先ほどのヴァラクーダとの戦闘で、左舷ブースターユニットが2%損傷している以外は、特に異常は・・」
さっきとは違うオペレーターが答えた。
「分かった、チェー!カイ、30度回頭!ビームシールド、展開良いな!大気圏突入しろ!」

ヘルファイアの先端からビームが出て、それが壁になった。
そして、ヘルファイアは地球に・・・まるで、抱かれるように落ちていった。


ーAM2:20ー

「何でだよ、何でこんなことになったんだよ・・・」

崎山が顔を青くし、地面を見てつぶやいている。

白川が見ている先には、寝付けないと白川を誘って外へ出るまでいたホテルがあった。残骸と化して。

そう、基礎補習の者が泊まっていた筈の、ホテルであった・・・

「皆、皆死んだのかな・・・・・」

白川がつぶやいた。

「あいつだ、あのモビルスーツ・・・」

崎山が顔を上げ、見つめる先は、都市を重火器で荒らすヴァラクーダが目に映っていた。 「聞いてねぇぞ・・・・フロンティアがMSを所有しているなんて・・・」

連合からMSの存在を地球の住民に正式発表されたのは一ヶ月前であった。
そして、誰もが知っているフロンティアのマークを肩、胸部、腿の装甲部に飾ったMSが大気圏から降下してきて現在町を破壊しているのだ。そして、ヴァラクーダの頭上では、虚しく抵抗を続け、そして墜とらされるTIN-コッドの機影が見えた。

「許すか・・・あいつ等、許すかよ・・・」

白川が反吐を出したようにそう言い放った時だった。

地が大きく振動した。

そして、二人が見上げたそらには・・・


地獄の業火のごとく、激しく炎に包まれた「何か」が落下しているのが見て取れた。

そして、地下では、今まさにフロンティアに地球上で唯一抵抗できる兵器、「MS-002ガジェット」が始動していた。